娘さんを一人で育ててこられたご婦人から相談を受けました。「私は主人と別れて娘を一人で育ててきました。その別れた元主人が癌を患い、先日亡くなりました。元主人は自分と別れた後一人でずっと暮らしており、相続人としては娘一人だけなので、役所から、元主人の死亡退職金の受取りの手続きをしてくれとの要請があり、その手続きをしました。公務員で、田舎で長い間教師をしていたので預貯金もあると思います。気になるのは田舎に家があり、田畑山林があることです。長く続いた先祖のお墓もあります。この田舎の不動産やもう何も付き合いの無い方々のお墓を守っていくことを私の娘にさせたくはないのです。そのため” 相続放棄 “ということを考えているのですが、死亡退職金を受け取る手続きをしてしまったので” 相続放棄 “はもう出来ないのでしょうか。」という内容でした。
確かに田舎の土地(負動産などと言われている土地も多いですね)とかお墓の管理が出来ないので、受けたくないという人も多いです。不動産だけを” 相続放棄 “するということは出来ません。プラスの財産もマイナスの財産(借金等)も全てを相続しませんというのが” 相続放棄 “です。相続放棄するには、相続を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して手続きをしなければなりません。
今回ご相談のあった死亡退職金については、相続財産に入るかどうか難しい問題があります。勤めていた会社の退職金規定で死亡退職金の受取人がきちんと決められていれば、民法上の相続財産にならないとされ、相続放棄をしてもその死亡退職金は受け取れるとされています。公務員の場合は国家公務員退職手当法や条例で受取人が定められており、死亡退職金は民法上の相続財産ではなく、受取人の固有の財産として受け取ることが出来るものなので、今回、この死亡退職金を受け取っても他に何も相続しないのなら、相続放棄が出来ます。
ただ、相続税法上は死亡退職金については全て” みなし相続財産 “とされています。全てが相続財産になるのではなく「500万円×法定相続人の数=非課税限度額」がありこれを控除した額が相続税対象となります。今回ご相談くださった方の娘さんがこの死亡退職金は受け取り” 相続放棄 “をした場合、相続人はこの娘さん一人ということなので、相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円となり、死亡退職金の非課税限度500万円×1人=500万円もありますので、お父様の死亡退職金が3,600万円+500万円=4,100万円までなら相続税はかかりません。そのようなお話をさせていただきました。
私どもの事務所では相続について相続税の最大限の節税を中心に色々な相談を賜っています。何でもご相談ください。
税理士法人野口会計事務所 所長 野口泰弘